下宮 憲二

喜べぬ梅雨明け(Q電やらせメール問題)

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 梅雨が明けてしまいましたねぇ。今年は、例年より約2週間ほど早いようです。私が司法試験を受けているときは、京都でコンチキチンが聞こえた後、論文試験が終わる頃に梅雨が明けて灼熱の夏が始まっていました。当時は、間借り(一軒家の一室を借りてトイレ、台所、お風呂等は他の住人と共同で使用する形態の建物賃貸借)をしており、前の住人が置いて行った壊れかけのウインドクーラーが私を救ってくれました。と言っても、部屋の入口に設置された電気メーターがグングン回ることで冷や冷やしていたのではないかと思います。

 そんな電気代が多くかかりそうな時期ですが、とある電力会社が、やらせメールを指示したことが問題になっています。新聞によると、国の主催する説明会に市民を装い運転再開支持の意見メールを寄せるよう、社員が、子会社の社員らに指示していたということですが、今回は、弁護人的に見てみます。

 やらせとは、実際は作為的な行為が行われているにも関わらず、何も手が加えられていないかのように見せることだとされています。よく問題になるのが、テレビ番組でのやらせですね。

 私の先輩が、司法試験受験生の日常としてワイドショーに取り上げられた時などは、午後3時頃に定食屋さんに連れて行かれボリューム満点のミンチカツ定食を食べるシーンを撮影され、夜は下宿仲間と月に一度の食事会をするというシナリオになっていたので、定食屋から帰って間なしに下宿の大家さんが振舞うごちそうを詰め込んだそうです。撮影時間を短縮するための措置だったとのことです。撮影は一日で終わったのですが、編集によって定食を食べた日と食事会の日は別々にレポーターがお邪魔し、先輩のありのままの日常を撮影したかのような形で放映されました。これがテレビかと恐怖を感じたものです。

 やらせメールに話を戻すと、今回の説明会の主催者は、国です。このため、国が原発を推進するような意見を第三者の意見として発信したり、第三者に共感メールを要請し発信させたものを一国民の意見として紹介していたのであれば、やらせメールということが出来ると思います。

 しかし、今回の指示メールをしたとされるのはQ電力社員です。説明会の主催者ではありません。このような場合でもやらせになるのでしょうか。
 しかも、指示メールの内容をみると、「可能な範囲で」「ご協力をご依頼いただきますよう、御願い致します。」とあります。これを見る限り、あくまでメールをするかどうかは協力依頼を受けた人の意思によるものであって、指示メールは、意見メールをする契機となったにすぎないように思えます。
 協力内容が、「再開容認の一国民の立場から~共感を得うるような意見や質問を発信(をご依頼)」とある点について市民を装うように指示したと評価されたのでしょうが、Q電力子会社の社員が一国民として意見を発信してもおかしくないと思います。
 さらに言えば、原発再開が自身の収入に影響される業種の方にしてみれば死活問題です。自己に有利な意見を主張されるのもまた一国民の立場だと思います。
 ですので、確かにこの時期に社会的責任のある企業の社員がするには不適切な行為だったかもしれませんが、今回のような場合までやらせと言えるのかと少し疑問に思います。
 それよりも問題は、Q電力がメールの指示を否定した後に課長級社員が依頼メールを送信したという事実が明るみに出たことではないでしょうか。現在の段階では、この社員の独断と説明されていますが、後に組織的関与だったことが判明した場合には、指示メールをしたこと自体の騒ぎでなくなるのではないかと思います。どこの電力会社も隠ぺい体質を持っているという疑念がさらに広がります。こうなっては、弁護人もお手上げです。

 いくらストレステストを実施してみても隠ぺいテストが実施されない限りは、梅雨に戻ってきてもらう必要があるのかもしれませんね。