下宮 憲二

一億総「ヘル中」時代の幕開け(自転車取締強化)

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 みなさんにとって最高の乗り物ってなんでしょう。ドアtoドアの車でしょうか、運転を気にせずに飲酒できる電車でしょうか、映画も観れて食事も付いている飛行機でしょうか。私は、最高の乗り物って自転車だと思っています。燃料もいらず、わずかな労力で計り知れない距離を移動でき、駐車スペースに困らず、経費もかからない。そして通勤時間が運動時間にもなってしまう。まさに、私にとっては理想の乗り物です。

 私は、学生の頃、大学から10㎞以上離れた下宿から通学していました。友人から何故そんな遠くに下宿してるのかと不思議がられていました。当初は、オートバイに乗っていたのですが、学校のオートバイ置き場が抽選の上での登録制になったこともあり自転車で通う事にしました。自転車に代えて思ったのがオートバイで通う場合と比べて通学時間があまり変わらないことでした。当時は、車が進入できず信号のない河川敷を通っていましたので常に自転車をこいでいるような状態でした。そんな道路事情もあったため、いかに速く到着するか自分との戦いでした。毎朝がタイムトライアルでした。当時はなんともなかったのですが、傍から見ると非常に危険な事をしていたのではないかと思います。現に、二度オートバイにぶつけられました。幸運にも物損のみで終わりましたが、私の方も自転車ということで車に乗っている時ほど交通ルールを意識していなかったことも原因だったと思います。

 そんなことが懐かしく思える時代が到来しそうです。警察庁は、自転車に対する取り締まりを強化することを発表しました。その内容は、自転車の車道通行の原則と歩道通行の例外の徹底、悪質で危険な運転は摘発するというものです。道路交通法上、自転車は「軽車両」として位置づけられており車道通行が原則となっています。

 現在、上記の私を含め自転車に対する利用者の交通ルールへの意識は低いのではないでしょうか。歩行者専用道路を走行したり、車道を無灯火で逆走するような行為をよく見かけます。安全のためにも、このような行為を防止し、利用者の意識を罰則等を通じて変化させていく必要があると思います。震災後において交通機関が麻痺することへの教訓から自転車利用者が増え、これに伴い自転車が関係する事故も増えていることからしても急務と言えます。

 過去において、今まで一般に問題視されていなかったことに対して国民の意識が変化した事例は多くあります。原動機付自転車のヘルメット着用義務、シートベルト着用義務、飲酒運転の罰則強化などです。

 私が子どもの頃は、これらはそれほど問題となっていなかったと思います。ヘルメット無しで気軽に原付に乗る人は多かったですし、シートベルトなどはしたことがありませんでした。また、飲酒しても仮眠程度で大丈夫といった雰囲気があったと思いますが、今の時代にこれらの違反行為を目にすると非常に違和感を感じます。そういった違和感はその時代に合った意識の変化がもたらすものだと思います。

 私の中学校時代は、自転車通勤の者はヘルメット着用が校則で義務付けられていました。このようにヘルメットをかぶった中学生は「ヘル中」と呼ばれていました。今でも、地方でヘルメット被った中学生を見ると、違和感にも似た懐かしさを感じるとともにヘル中仲間としてほほえましく思ってしまいます。

 しかし、このまま自転車に対する取り締まりが強化されていくと、ヘル中スタイルが違和感どころか逆にヘルメットをかぶらないことに違和感を感じるようになるかもしれません。それどころか、自転車にもナンバープレートが付され、自賠責保険への加入が強制され、自転車に車検制度が導入されるかもしれません。ヘル中は自転車新時代の魁となっている可能性すらあるのです。

 自転車は、気軽に乗れることもその魅力の一つであると思いますが、安全であることが大前提であることからすると、一億総「ヘル中」化もそう遠くないのかもしれませんね。