蓮見 和章

「子どもシェルター」を知っていますか?

 広島事務所の蓮見です。
 早速ですが、皆さん「子どもシェルター」という言葉をご存じですか?
 私は先週、この「子どもシェルター」に関するシンポジウムに携わる機会があったので今日はこの話をしたいと思います。
 「子どもシェルター」とは、貧困や虐待その他さまざまな事情から、家に帰れない、居場所のない子どもたちの緊急避難場所となる非公開の民間施設のことを言います。
 虐待や家庭の貧困等により、家庭において最低限度の生活をさせてもらえない、あるいは家を追い出されてしまった子どもにとって、「今晩帰る家がない」ことは切実な問題です。子どもには、自分で自分の衣食住を賄うだけの経済力も社会的な交渉力もないのであって、安全に眠ることができ、食べることができ、親身に話を聞いてくれる人間がおり、保護されている場所が必要になると思います。しかし、家族や地域社会の連帯、連携が希薄になっている現代社会においては、行き場をなくした子どもが緊急避難できる場所は格段に減少しています。
 行き場をなくした子どもを一時的に保護する法的制度としては、児童福祉法上児童相談所における一時保護制度及び民間機関への一時保護委託の制度が存在します。しかし、児童福祉法は、18歳未満の子どものみを対象としており、18歳以上の女子については売春防止法上の保護として婦人相談所での保護が可能であるものの、18歳以上の全ての子どもを保護するための社会的制度は、現在のところ存在しておりません。また、18歳未満の子どもに関しても、上記の施設には受け入れ人数等に限界があり、行き場をなくしたすべての子どもが保護を受けることは不可能というのが現状なのです。
 このような状況の中で、全国で弁護士を中心に「子どもシェルター」設立の動きが広まり、東京、横浜、名古屋、岡山に引き続き、この広島でも、全国5番目となる子どもシェルター「ピピオの家」が今月開設されたのです。
 この子どもをめぐる問題、実は法的にはなかなか難しい問題を含んでいます。親権の問題です。虐待を受けていると子どもが感じても、親は、「しつけの範囲内だ。」と言いかねませんし、病気をしていても子どもを病院に連れて行かない親からは「子どもは病院に行くほど悪くない。親の責任で判断しているのだから文句をいわれる筋合いはない。」と言われかねません。親権の範囲内の行為なのか、親権濫用の行為なのか、弁護士が「子どもシェルター」において求められていることは、この点をしっかり検討したうえで子どもを保護できるか決定し、シェルターにいる法的に子どもをしっかり守ることです。
 子どもは環境によって大きく変化します。子どもを傷つけるのも大人ならば、その傷ついた子どもを癒すのも大人の責任だと思います。
 ちなみに「ピピオ」とは、ラテン語で「ひなばと」を意味します。実は、この名前は広島事務所の事務局が考えてくれました。居場所がわからずさえずっている子ども達が、社会という大空にはばたいていけるように、弁護士として自分が出来ることをしていきたいと思います。